心臓が血液を送り出すときの血管内の圧力が「血圧」です。血圧には、心臓が収縮して動脈に血液を送り出すときの「最大血圧」と、心臓が拡張するときの「最小血圧」があります。最大血圧を収縮期血圧、最小血圧を拡張期血圧ともいいます。
高血圧の80%は、原因がほかにない本態性高血圧であり、そのうち40%に遺伝が関係し、そのほか生活習慣などが関与しています。あとの15%は腎性高血圧といい、腎炎や腎血管硬化症などが原因で、残りの5%は副腎などのホルモン異常によるものです。
原因がほかにある高血圧のことを2次性高血圧といい、手術などで治ることもあります。高血圧になる体質は遺伝しますので、両親が高血圧なら子供の約半数が高血圧になり、片親が高血圧なら約4分の1が高血圧になります。家族に高血圧の人がいる場合には時々血圧を測り早期発見に努めましょう。
頭重感、頭痛、肩こり、めまい、吐き気、耳鳴りなどが高血圧の症状といわれていますが、ほとんどは無症状です。高血圧を放置すると無症状のまま、いきなり脳卒中、心臓病、腎臓病などの合併症が出るため、高血圧をサイレント・キラー(沈黙の殺人者)と呼びます。特有の自覚症状がないため高血圧の早期診断のためには40歳を過ぎたら病院や家庭での定期的な血圧測定が大切です。
血圧が1日中同じということはまずありません。活動状態、体調、精神状態、また寒さなどの温度でも変化します。
また、高血圧の方の約半数は、明け方から起床時にかけて極端に血圧が上昇する早朝高血圧(モーニング・サージ)を認めます。眠った体が一斉に目覚め、活動のための交感神経の影響で血圧が急上昇し、動脈へのストレスも一気に増大します。したがって起床直後は心筋梗塞や脳卒中の発生率も高く、家庭血圧計により早朝の血圧を測定することが大切です。
外来血圧のみが高く家庭血圧が正常な場合は「白衣高血圧」と呼ばれ、心血管系のリスクはなく降圧治療は不要です。逆に、外来血圧は正常でも家庭血圧が高血圧を呈している場合は「仮面高血圧」と呼ばれ、心血管系のリスクが高いことがわかっています。
高血圧では下表のような生活習慣の是正や生活上の注意が必要です。
また、家庭血圧計で血圧日誌をつけると、血圧の朝晩の安定度、血圧の下がり過ぎや季節による変化をチェックでき、降圧薬のきめ細かい調節に役立つので、高血圧の方の必需品です。
血圧が十分コントロールされたら薬を減らしたり、休薬できることもありますが、休薬後も外来での経過観察が必要です。しかし、大部分の方は生活習慣の修正のみでは目標血圧にならず、一生お薬を飲むことになります。お薬を飲む不便さや副作用と、高血圧による心血管事故で生命を落とす危険とを天秤にかけると、薬物治療にやはり軍配が揚がります。ちょうど、目が悪い人が眼鏡をかけ続けるように、お薬で良い血圧を維持することが大切なのです。
食事 | 塩分制限(7g以下)とナトリウムを排泄してくれるカリウムの多い食物(果物、野菜)を適度にとりましょう。肥満があればカロリー制限が必要です。 |
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嗜好品 | 過度のアルコール(日本酒換算で2合以上)は長期的には血圧を上昇させます。また喫煙は動脈硬化の危険因子の1つであり、血圧も上昇させます。 |
運動 | 適度な運動は心身をリラックスさせ、血圧を低下させます。 |
入浴 | 急激な温度差は血圧を変化させます。特に冬は寒い脱衣所と熱いお湯の温度差に注意しましょう。 |
排泄 | 便秘による力みや、尿意の我慢も血圧を上昇させます。また冬のトイレの室温にも気を付けましょう。 |
睡眠 | 睡眠不足、不規則な生活は血圧を上昇させます。 |
ストレス | 過度の精神的ストレスも血圧を上昇させます。ストレスをためないようにしましょう。 |